
1. はじめに
新規上場(IPO)は投資機会として大きな注目を集めますが、発行体が公開する目論見書は数十ページにわたり、企業概要や財務情報、リスク要因などが詳細に記載されています。これを人力で読み込むには相当な時間と労力が必要です。
そこで本記事では、AI対話型リサーチツールNotebookLMを用い、PDFアップロードから要約・マインドマップ化までを実践的に解説します。
2. NotebookLMとは?
NotebookLMは、Googleが提供するAIベースのリサーチ支援ツールで、PDFやウェブ記事をノートにインポートして対話形式で解析できます。主な特徴は以下の通りです。
- 多彩なインポート: PDF、Word、Googleドキュメント、URLリンクなど多種ファイルをOCR処理し、テキスト化
- 対話型Q&A: セクションごとの要約だけでなく、「この企業の主要競合はどこか?」など自由な質問にも回答
- 図表・マインドマップ生成: マークダウンやビジュアル図表、マインドマップを自動生成し、視覚的に情報を整理
- コラボレーション機能: チーム内でコメントやタグ付けができ、共有ノートとして活用可
- データ保持・セキュリティ: インポートしたファイルは自動暗号化、プライベートモードで閲覧制限可能
従来のPDFリーダーやドキュメント管理ツールとは異なり、AIによる自動解析と対話形式の深掘りが可能な点が最大のメリットです。
3. IPO目論見書PDFのアップロード手順
以下の手順で、IPO目論見書をNotebookLMに取り込んでみましょう。
- NotebookLMにログインし、画面左上の「新規ノート」をクリック。
- ノート編集画面のサイドバーから「ファイルを追加」を選択し、PDFをドラッグ&ドロップ。
- 自動でOCR処理が始まり、テキストインデックス化されるまで数秒~数十秒待機。
- アップロード完了後、画面中段に目次が表示され、各セクションへ一クリックでジャンプ可能。
- 右側のチャット欄に分析プロンプトを入力し、要約やキーワード抽出を実行。
ポイント: PDFの解像度や形式によってOCRエラーが出る場合は、事前にスキャン品質を上げるか、NotebookLM内のOCR設定で言語モデルを「日本語+英語」に変更すると認識精度が向上します。
4. 要約機能の活用事例(IPO)
セクション単位で要約を行うことで、長文でも短時間で要点を把握できます。以下では2025/03/27に上場したZenmuTechの発行条件、財務ハイライト、事業モデルの3つを取り上げます。
4.1 発行条件セクションの要約
このPDFの「発行条件」セクションを200字程度で要約してください。
生成例:
募集方法はブックビルディング方式で、発行価格はこの方式により決定されます。
•申込期間は**2025年3月18日(火)から3月24日(月)です。
•払込期日は2025年3月26日(水)です。
•申込証拠金は1株につき1,580円(訂正後)で、利息はつきません。
•引受人は買取引受を行い、引受価額と異なる発行価格で募集を行います。
•元引受契約には引受手数料は支払われず、売出価格と引受価額の差額(1株につき126.40円)の総額が引受人の手取金となります。
•元引受契約は2025年3月17日に締結されました
Tips: 課題が多く含まれる場合は、「要約結果を要点のみ箇条書きで返答してください」と追記すると、整理しやすい箇条書き形式で出力されます。
4.2 財務ハイライトの要約
「財務ハイライト」セクションを150字でまとめてください。
生成例:
提示されたソースに基づくと、「財務ハイライト」という明確なセクションタイトルはありませんが、「経理の状況」や「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」、「主要な経営指標等」などのセクションに財務に関する重要な情報が記載されています。これらの情報から要点をまとめると以下のようになります。
•当第3四半期累計期間においては、秘密分散ビジネスのサブスクリプション契約継続により売上高が増加し、売上総利益、営業利益、経常利益、四半期純利益を計上しました。
•過去の期間(第7期から第9期)においては、製品開発等に関する投資が先行したことから当期純損失を継続して計上し、債務超過となっていました。
•新規発行による手取概算額は、第三者割当増資の手取概算額上限と合わせた合計額を、主に運転資金として人件費及び人材採用費に充当する予定です。
応用: 複数年分のセクションをまとめて、「過去3年間の財務推移を比較してください」と質問すると、以下のように出力されました。
•第7期から第9期(2016年2月期から2022年12月期にかけて)にかけては、主に製品開発等に関する投資が先行したため、当期純損失を継続して計上しており、その結果、債務超過となっていました。
•第10期(2023年12月期)債務超過を解消しました。
•当第3四半期累計期間(2024年1月1日から2024年9月30日)売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益、経常利益、四半期純利益を計上しており、財務状況が改善傾向にあることが示されています。
要するに、過去3年のうち少なくとも初期の期間(第8期、第9期)は投資先行による損失と債務超過の状態でしたが、直近の期(第10期)で黒字化と債務超過解消を果たし、当期に入ってからも利益を計上し続けているという推移が読み取れます
4.3 事業モデルの要約
「事業モデル」について、主要サービスと収益構造を200字以内で解説してください。
生成例:
当社の「事業モデル」の要点は以下の通りです。
•主要サービスは、秘密分散技術を用いた情報漏洩対策ソリューション「ZENMU Virtual Drive」と秘密計算ソリューションです。
•収益は、ライセンスの一括販売(フロー型)と、サブスクリプション契約や保守契約による継続的な収益(ストック型)で構成されます。
•販売は主に代理店を介して行われます。
5. マインドマップ機能の活用事例
マインドマップを生成することで、ノート全体を俯瞰しやすくなります。投資判断の際に見落としがちなリスク要因や重要ポイントを可視化しましょう。
5.1 マインドマップ自動生成
マインドマップは自動で生成されます。
生成されるイメージ例:
5.2 マインドマップの活用メリット
- 全体構造を一枚で俯瞰でき、情報の抜け漏れを防止
- カスタマイズ可能な色分けで、重要度やリスクを直感的に把握
- 画像としてエクスポートし、社内共有やプレゼン資料に活用可能
6. プロンプト例集
以下はよく使うプロンプト例です。用途に合わせてアレンジして活用してください。
用途 | プロンプト例 |
---|---|
セクション要約 | 「\”リスク要因\”を150字で要約し、主要項目を箇条書きで示してください」 |
キーワード抽出 | 「このPDFから重要キーワードを10個、優先度順に抽出してください」 |
比較分析 | 「同時期上場のA社・B社・C社の売上高と初値騰落率を表形式で比較してください」 |
感情分析 | 「文章全体のトーンを分析し、ポジティブ・ネガティブの傾向を示してください」 |
トレンド検出 | 「財務推移データから過去3年の成長トレンドを抽出してグラフを提案してください」 |
Q&A | 「この企業の主要競合と差別化ポイントは何ですか?」 |
7. まとめ
本記事では、NotebookLMの基礎的な機能であるPDFアップロード、要約、マインドマップ生成を中心に、IPO目論見書のリサーチ手順を詳しく解説しました。これまで手作業で数時間かかったドキュメント分析が、AIの力で数分に短縮できることをご実感いただけたでしょう。
AIツールを活用することで、投資リサーチの生産性と精度を同時に向上させられます。ぜひNotebookLMを導入し、さらなる投資機会の発掘にお役立てください。
8. NotebookLMをUdemyで学ぼう
NotebookLMの基本操作から応用活用まで体系的に習得したい方には、Udemy講座「30分でGoogle最強生成AIをマスター!NotebookLM徹底活用ハンズオン」がおすすめです。動画でデモを交えながら手順を解説しており、初めての方でも安心して学べます。
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